東京都市センターホテルにて開催の
全国自治体病院経営都市議会協議会主催『第10回地域医療政策セミナー』に
三浦市議会都市厚生常任委員会メンバーと三浦市立病院職員が参加しました。

平成25年度三浦市立病院は黒字経営ですが、
今後も地域医療を取り巻く環境は厳しくなります。
医師不足・偏在問題をはじめ、地域における医療現場の実態について
詳しいお二人の講師により、地域医療をいかに守り育てるかについて、
それぞれのご経歴や実務経験を踏まえたお話を伺います。

『激動の時代の病院経営とは
       ~これからの経営マネジメントと地域連携を考える』
講師:社会福祉法人恩賜財団 済生会 正木義博氏

横浜市東部病院を黒字化した経験をふまえて、
病院をいかにして変えていくか?が今回の講演テーマ。
元早稲田のラガーマン、チーム一つの塊となって、病院を改革していくべき。

病院というのは、装置産業→ベッドが埋まらない(8割)と赤字になる。
→ 病床が埋まらなければ対策を考える!
  救急を断らない病院に(救急の半分は入院に繋がる)!

1.医療を取り巻く外部環境の激しい変化
<診療報酬改定率の推移>→
1996年を100とすると、
2014年では、90.154で、9.846%の減少(消費税対応分を除く)

<社会保障制度改革国民会議報告書(25年8月6日)>
「地域医療完結型」の方向へ→ネットワークの構築(医療・介護・福祉)

「どれほどの病院がついていけるか?」

<26年度診療報酬改定から基準の見直し> →
①高い精度の要求 国としては、7対1病院を半分にしたい
②十分な職員の配置
③在宅復帰機能の強化 在宅復帰率の追加要件 75%以上

<自治体病院 経常収支の状況>
黒字病院 53.6%
赤字病院 46.4%
自治体病院は黒字が減少している…23年53.0%→25年46.4%

<今後制度改定が考えられること>
●DCP暫定調整係数削減
●入院対外来比評価の復活?
●紹介状をもたない外来患者の負担増 5,000円予定

2.病院改革を推し進める
●外部環境への対応
●健全なる経営組織体
●医療の質の向上

これから病院が向かうべき方向・目標を明確にする

行動計画書を作成する

戦術にのっとり実行

病院が立てた行動計画の成果
を広報する

3.バランス・スコアカードを使った計画立案(BSC)
<BSCの基本構図>
●財務の視点
●顧客満足の視点
●業務プロセスの視点
●学習と成長の視点→忘れられがち
職員の満足・働く喜びの向上
組織への帰属性向上

BSCとは、1992年米国ロバート・キャプラン教授が発表した業務評価システム。
未来志向、バランスの取れた経営。
⇔ 財務指標等の古典的経営管理には、ビジョン・戦略はない

「ビジョンを作成しなければ改革出来ない」
ビジョンを達成するために戦略を策定し、その戦略を実際に遂行していくためには、
具体的な行動の戦術が必要で、その戦術を記す計画書が重要である。

<全職員で年度行動計画をする目的>
組織のベクトル合わせによる組織の活性化と変革
行動計画書は部署、「チームで作成」

KGI(数値目標値)を設定
個人目標は人事評価に繋がる → 部署から個人へ
400床病院で
入院単価10万円に・外来単価もアップ

4.患者さんサービスを行う
<クリニカルパスを作成>
<やさしさ・挨拶・マナー・接遇>
朝から患者さんをお出迎え・車椅子を準備
<疾患説明書>
<公開講座の充実>
出前講座を実施、地元のイベント参加

5.連携(ネットワーク)システム作り
<医療ネットワークの構築>
「病診連携室」「病床管理部」という部署
救急患者の50%が入院患者になる。
医療・介護・福祉に関わる部署が連携
<医療人の育成>
<地域包括ケア病棟>
熊本市では急増

6.医療連携強化のための努力
<ドクターの営業努力>
●実習・研修受け入れ
●カンファレンスの開催
●ドクターの地域派遣
●患者紹介・逆紹介
逆紹介率190%

7.最近の連携医療
転院率 通常5%、熊本病院は29%
※地域に診てもらうようにする(リハビリ等)
平均在来日数 約9日
〈これからの連携医療体制の構築〉
地域包括ケア病棟
在宅患者をしっかり診る
回復期医療施設が連携の中心へ

8.事務の仕事を変える
<経営マネジメントは事務の責務>
経営管理
医療の判る事務職員の育成

コメディカルが協力的な病院
人的要素が重要 
→ 医師が働きやすい環境へ(学会や資格を受けやすく等)
「経営企画室」情報収集、分析

9.「チーム」を作る
スクラムのようなチームワークを!
人事制度マネジメント→プロフェッショナル集団・職員と家族の幸せ
まずは繰入金返上
チームリーダーを育てる→
●何が問題なのか見つけ出す力
●大きな夢と希望を持ち語る力
●部下への心配り、部下を信じ、勇気を与える力
●あふれる自信、諦めない精神力
●成功への強い決意と多くの知識、実行力

10.経営マネジメントを行う
専門家以外の仕事は全て事務方の仕事
<地域ニーズに応じた医療実現への努力>
組織・財務・業務・マネジメント分析を行い月次報告をする
<質の高い医療の実現>

11.今、病院に求められているもの
●経営資源を集中できるか?「人」が大事
●地域の信頼
●質の高い医療の提供
●いかに早く組織改革ができるか
●職員が一丸となりチーム化できるか

病院改革の見える化→ BSCの活用

「地域への貢献、患者さんの喜び、そして職員の幸せを」
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『志を救われた泣き虫小児科医の一例』
講師:兵庫県立柏病院小児科部長 和久祥三氏

「丹波の事例から、和解の心を知ってもらいたい」

<地域医療とは…?>
医師や医療従事者が地域の住民に働きかけて、
疾病の予防や健康の維持、増進のための活動を行うこと。

地域医療の主語は…「住民」「医療者」「行政」
「心」医師の志・住民の心がけ
「技」医療・行政システム
「体」医療スタッフ・お金

<医療崩壊>
大学病院の独立採算
平成16年度「新研修医制度」→
人材派遣システムの崩壊

医師数国際比較…日本は最下位から4番目
2.1人/人口千人当たり
ギリシャ 5.0人、ベルギー 4.0人、ドイツ 3.5人、
米国 2.4人、カナダ 2.1人/千人当

<小児科医は三重24時間拘束苦>
周産期医療
一般・救急小児科外来
一般小児科入院管理     全て24時間即対応

<医療者自身もその家族も「医療崩壊」の犠牲者に>
患者の親が、医師の過酷な勤務実態を知って…丹波新聞の足立智和氏が介入
●当直明け36時間連続勤務
●外来・入院・救急・緊急手術の綱渡り
●患者の無理解によるコンビニ受診

丹波の母親たちが本気になり、母親たちが主語になった。→

<県立柏原病院の小児科を守る会>設立
住民運動が立ち上がる→
守る会のスローガン
●コンビニ受診を控えよう
●かかりつけ医を持とう
●お医者さんへ感謝の気持ちを伝えよう

<守る会のノーベル賞級の活動とは?>→
「医療の不確実性」を母親たちが伝える
181カ国の妊産婦死亡率→398人に一人が亡くなる

日本のデータは…14,286人に一人。
「お産は危険という前提」→訴訟の対象→産婦人科を選ばなくなる
救急医や外科医も訴訟リスクで医学生が選ばなくなる。

「守る会」は、柏原病院の小児科だけでなく、日本の医療を守ろうとしている!

<丹波医療再生ネットワーク>設立

「私の講演以前にコンフリクト(紛争・葛藤・ケンカ)に対する
問題解決・和解の方法をご存じでしたか? → NO 91.4%

「我々の日常はコンフリクト(矛盾と対立)に充ち満ちている…」
個人:葛藤、個人間:いさかい・争い・揉め事、
集団内:内部紛争・派閥・いじめ、集団間:抗争・紛争

『あの人と和解する』井上孝代著
「和解」の方法とは?→

<トランセンド法(超越法)>
国連アドバイザー ヨハン・ガルトゥング
…「妥協」いう両者に不満が残る低い目標ではなく、
仲介者をつけることで「両者の希望の総和+α」の解決地点を模索する

コンフリクトは…
●二つ以上のゴール(目標)が両立・共存しない状況
●人間社会にはつきものの現象
●ミクロからマクロまで様々なレベルで生じている。
●それ自体が善または悪であるというものではない
人間関係や社会関係を発展させるのが、「矛盾」であり、
人間を発達させる原動力となるのが「矛盾(コンフリクト)」

<トランセンド法の特徴>
①基本姿勢「共感」「非暴力」「創造」
②一方的決定の先延ばしをして、各当事者と別々なところで会い、対話する
③別々の場所での聴取なので感情処理が容易
④各当事者の理想的な結果は何なのかを各々から聴く
⑤ブレーンストーミングで批判無しで話し合う
⑥当事者双方の基本ニーズが満たされ、
コンフリクトの5つの結果に照らし合わせ紛争を転換

<コンフリクトの過程の結果>
①A1が勝つ(暴力・審判)
②B1の勝つ(暴力・審判)
③撤退(言い逃れ)
④妥協(交渉)
⑤超越(対話)

妥協しながら、蛇行しながら超越点を目指す
⇒ 今回の場合は…「地域医療を守ろう!」という理想に辿り着く

<トランセンド法の心理的プロセス>
レベル1.ウィンルーズゲーム…最も原始的 正義は一方
レベル2.ゼロサム・ゲーム…認知の拡大で妥協
レベル3.ウィンウィン・ゲーム…二つの結果を可能にする
レベル4.トランセンド法
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